こんにちは、プロ家庭教師のひかるです。
中学受験を目指すご家庭から、よく相談を受けることがあります。それは…
4科受験と3科受験、どちらのほうがいいですか?
というご質問です。
つまり、関西圏の中学受験で…
社会は必要か?
それとも不要か?
というお悩みです。
中学受験の主要教科といえば、算数・国語・理科・社会です。
ただ、関西圏の中学受験では、社会なしの3科で受験できる中学校が多いです。
社会を勉強しておいた方がいいのでしょうか?
それとも社会を捨てて3教科にしぼった方がいいのでしょうか?
今回の記事では…
- 関西の中学受験において社会を学習するメリット・デメリット
がわかります。
社会についてお悩みの方の参考になれば幸いです。
元塾講師・プロ家庭教師として、のべ1000人以上を担当してきたノウハウをお伝えします
関西圏の中学受験では、なぜ3科受験が増えたのか?
社会を学習するメリット・デメリットをご紹介する前に、なぜ関西圏の中学受験では、入試科目に社会を課さない中学校が増えたのかについて触れていきます。
1番大きな要因は…
関西圏トップ校の灘中学校と甲陽学院中学校が、昔から算数・国語・理科の3教科受験だったこと
が挙げられます。
灘中学校・高校の校長先生が、朝日新聞社からのインタビューで「(灘中・灘高には)理系志望が多いのはなぜ」という質問に対し、次のように答えています。
中学入試で算数の能力を求められることや、社会は暗記科目なのでその能力は見ないという判断から中学入試で課していないことで、理系が好きな生徒がたくさん入ってくるからでしょう。
『朝日新聞EduA』の記事より引用
自分の個性は理系の進路で生かせると思っている生徒が多いようです。
つまり、灘中学校の入試問題では、暗記の能力よりも思考する能力を重視しているので、出題が暗記に偏ってしまう社会は入試科目から外しているというわけです。
社会で思考力を問う問題は作りにくいということやな
他の学校は灘や甲陽に続かざるを得ない…
統一入試日にいっせい中学入試がスタートします。
午前入試・午後入試も行い、数日間での短期決戦の過密スケジュールです。
すると、トップ校の灘中学校や甲陽学院中学校が3教科ならば、他の私立中学校も3教科入試を始めざるを得ません。
なぜなら、灘中学校や甲陽学院中学校を志望して3教科にしぼって学習している優秀な受験生が、「受験科目に社会があるから」という理由で、他の私立中学校を併願してくれない可能性があるからです。
その結果…
うちも(灘中学校や甲陽学院中学校と同じように)3教科で受験できますよ
という理屈で、3教科受験が広まっていくことになります。
関西圏の大手の中学受験塾を比較した記事はこちらをご覧ください↓
お手軽さをアピールする学校も増えた
また、ただ単に「生徒数確保」という目的のために、3教科受験をウリにする中学校もあるでしょう。
少子化が進み、受験生(小学6年生)という母数がだんだん少なくなってきています。
すると、人気校なら受験生は自然と集まってきますが、あまり人気がない中学校は受験生がだんだん減ってしまいます。
そこで…
うちなら手軽に3教科で受験できますよ
というお手軽さをアピールすることになります。
灘中学校や甲陽学院中学校などは、昔から理念があって社会を受験科目に課していません。
でも、「生徒集め」という経営戦略的な理由から、社会を受験科目から外すのは、私個人としては反対です。
重要語句をきちんと覚える「暗記力」も、きちんと評価されるべきだと考えているからです。
暗記するための「忍耐力」や「やり抜く力」を持った受験生も、評価してあげてほしいですよね
「生徒数確保」のためだけに、3科受験をアピールする中学校は、そのうち…
うちは2教科で受験できますよ!
いや、1教科でも受験できます!
という次元に行きつきそうな気もします。(実際、1教科でも受験できる学校が出てきています)
話がそれましたね(笑)私個人の意見はさておき…
いずれにしても、関西圏では社会は「4教科目」扱い。
初めから社会を「捨てて」、3教科だけ勉強する小学生が多いのです。
中学受験で社会を勉強するメリットとは?
では、3教科受験が増えている関西圏の中学受験において、社会を学習するメリットとは何なのでしょうか?
社会を学習する4つのメリットは…
- 知識で勝負できるので点数が安定する
- 他教科で失敗したときのリスクヘッジになる
- 他教科の学習の役に立つ
- 中学入学後には社会を勉強しなければならない
だと、私は考えています。
それでは、1つ1つくわしく見ていきましょう。
※中学受験の社会のおすすめ問題集・参考書についてはこちらの記事をご覧ください↓
知識で勝負できるので点数が安定する
社会を勉強するメリット1つ目が、「知識で勝負できる」という点です。
算数や国語は、入試問題の内容によって、波が出やすい教科です。
例えば国語では、読みにくい文章が出題されたり、文章量や記述問題の量によっては時間との闘いになります。
一方、社会の入試問題では、暗記している知識をアウトプットすることが中心となります。
じゃあ、暗記するだけで、そこそこ点数取れるやん
もちろん例えば大阪府の難関校・清風南海中学校では計算問題が出題されていたり、四天王寺中学校で記述問題が出題されたりすることはあります。
しかし、ほとんどの場合、社会では「どれだけ知識をきちんとインプットしているか」が勝負の決め手になります。
手持ちのインプット量で勝負が決まるということは、社会は「努力が報われやすい教科」とも言えます。
覚えれば覚えるだけ点数が上がりやすいというのは、やりがいがありますよね。
きちんと知識を頭に入れていれば、点数が安定しやすくなります。
試験当日に波が出にくい教科って、心強いと思いませんか?
各分野の勉強方法について、ここに書くと本筋からそれてしまいますので、リンクを用意しました↓
<暗記のコツ>
<歴史の勉強法>
<地理の勉強法>
<公民の勉強法>
他教科で失敗したときのリスクヘッジになる
算数・国語・理科の3教科で受験した場合と、算数・国語・理科・社会の4教科で受験した場合には、どのようにして比較して合否を決定するのでしょうか?
例えば、大阪府にある男子校・清風中学校では、4教科受験・3教科受験が可能です。
3教科受験の場合は、やはり、社会を除く、算数・国語・理科で受験することになります。
次のように計算し、合否を決定しています。
<4教科受験>
算数120点+国語120点+理科80点+社会80点=計400点満点
<3教科受験>
(算数120点+国語120点+理科80点)×1.25=計400点満点
このように3教科の合計点320点を1.25倍して、400点満点にそろえたうえで点数比較を行うわけです。
社会を捨てて3教科受験をした場合、1教科の出来・不出来が大きく点数に影響するのがわかります。
例えば、国語で大きなミスをして点数が低かった場合、その低い点数が1.25倍されてしまいます。
他の2教科で、国語のミスのカバーをしなければなりません。
ミスを取り返すのが大変やん
そういうこと
しかし、4教科受験の場合はどうでしょうか?
先ほどと同様に、1教科で大きなミスをして点数が低かった場合でも、他3教科でカバーしやすくなります。
しかも、悪い点数が1.25倍されることもありません。
いや、もし社会で失敗したら、4教科で受験すると損ちゃう?
そう感じたかたもいらっしゃるかもしれません。
でも、さきほどの清風中学校では、4教科受験の場合、「4教科の合計得点」と「3教科の合計得点を1.25倍した点」のうち、高い方の点数を採用してくれます。
(※2024年度入試までの場合。くわしくは清風中学校ホームページをご覧ください)
つまり、もし社会で失敗してしまったとしても、その場合は算数・国語・理科の3教科の合計点を1.25倍してもらえます。
清風中学校だけでなく、他の中学校でも同じような配点・合否判定が設けられています。
このように、社会を勉強して4教科で受験することは、他の教科で失敗したときにリスクを回避することにつながります。
また、中には、算・国・社の3教科で合否判定をしてくれる中学校もあります。
他教科の学習の役に立つ
社会を勉強しておくメリットの3つ目として、「他教科の学習に活きる」ということが挙げられます。
例えば、大阪府南部の難関校、清風南海中学校では、2019年度(B入試)で、『枕草子』の作者を記号で選ばせる問題が出題されています。
もちろん国語の授業でも「文学史」として、清少納言は登場するでしょう
でも、各塾とも国語の授業で「文学史」にさほど時間を割いて指導しているわけではありません。
社会を学習している場合には、文学史の問題をきちんと正解できる可能性が高くなります。
紫式部と清少納言が、いつもごちゃごちゃになるねん
また、大阪府北部の難関校、高槻中学校では、2020年度(A日程)で、農業が人間の暮らしに与えた影響についての論説文が出題されました。
- 穀物は保存ができるので、貧富の差がうまれた
という歴史的な流れを知っていれば、非常に読みやすい文章でした。
また、その事実を知っているだけで、解きやすい設問が3問ほど出題されていました。
このように、社会で学んだ知識が、国語や理科の学習や試験の役に立つことがあるのです。
中学入学後には社会を勉強しなければならない
確かに、社会を捨てて、3教科の学習だけで、中学入試は突破できるかもしれません。
しかし、中学校に入学してからの社会の学習を避けて通ることはできません。
中学校に入ると、すぐに地理や歴史の授業がスタートします。
5月頃にはすぐに中間テストがやってくるでしょう。
中学受験の受験科目として社会を学習している場合としていない場合では、中学に入ってからの負担が異なります。
中学校入学後に、社会に苦しむ子はけっこういます
中学入試で社会を勉強してこなかった生徒は、一から学習に取り組まなければなりません。
ひどい場合には、都道府県の名前と位置から覚えなければならない子もいます。
歴史においても、時代のイメージをつかめていない子も結構多いものです…
一方、中学受験で社会を学習していた場合には、中学校の社会の内容は「プラスアルファ」として対応可能です。
すでに知っている内容に、新しく学習する内容を肉付けするだけでいいのです。
また、大学入試でも、結局は社会が必要になりますよね。
中学受験が終わってからのことを考えても、社会を学習しておくメリットはあるのです。
中学受験後、中学校入学までに、家庭教師などを利用して、急ピッチに社会を学ぶご家庭もいらっしゃいます
関西では、4教科目扱いされてしまう社会は、どうしても後回しにされてしまいがちです。
「暗記すれば何とかなる」と、軽んじられている節もありますよね…
ただ、6年生になってから本腰を入れても、基礎ができていないと入試までに間に合わない可能性が高いです。
受験学年になる前に、社会の土台を作っておくことは大切です。
「社会を後回しにしないで!」という私からのメッセージについてはこちらにも詳しく↓
中学受験で社会を勉強するデメリットとは?
ここまで社会を学習するメリットばかりをお伝えしてきました。
では、関西圏の中学受験において、社会を学習するデメリットは何でしょうか?
それは…
勉強の労力を社会にも割かなければならない
この1点に尽きます。
受験生にとって、「時間」は大切な資産です。
いくら時間があっても足りない!
そう感じている受験生やお母様・お父様も多いのではないでしょうか。
ただでさえ、塾で学ぶ算数・理科の内容が難しい…
おまけに国語の文章を読むのにも、時間が取られる…
社会なんか勉強してる場合ちゃうわ!
そのように結論付けられるご家庭が多いのもうなずけます。
もし社会に手を付けなければ、その時間を算数・国語・理科に割くことができるのですから。
まとめ:社会を学習して4教科受験をするメリット・デメリット
ここまで社会を学習するメリットとデメリットをご説明してきました。
お子様の状況に合わせて、社会という「切り札」を効果的に使いましょう。
もし…
- 中学受験の勉強を始める時期が遅かった
- 社会がとにかく嫌い!
- 4教科まで手が回らない…
という場合には、算数・国語・理科の3教科にしぼって学習するのもアリだと思います。
効率を最優先にして学習しなければ、入試まで間に合いません。
一方、まだお子様が4年生以下や5年生のはじめ頃ならば、社会の学習をしておくことをオススメします。
あまりにも社会に苦手意識を持っている場合は別ですが、社会の学習をしておくメリットはやはり大きいでしょう。
社会を学習しておくことで、1教科分、視野を広く持つことが可能です。
武器は1つでも多い方がいいですよね
ただ、もし社会があまり身に付かなかった場合には、6年生の夏ごろには見切りをつけてもいいかもしれません。
また、算数・国語・理科の3教科ではなく、算数・国語・社会の3教科で受験可能な中学校もあります。
実際、算数・国語・社会の3教科で合格したお子様を数名担当したことがあります。
もしお子様が理科が苦手で社会が得意という場合には、社会をメイン教科にすえて受験対策するのもアリです。
(受験できる中学校は少なくなってしまいますが)
また、私自身、家庭教師として社会を指導することも多くあります。
もし塾に通っているけれども、社会の学習がうまくいっていない場合には、家庭教師を利用するのも有効です。