こんにちは、プロ家庭教師のひかるです。
中学入試は子どもたちにとって、初めての「試練」と言ってもいいでしょう。
しかも、合格と不合格がはっきりと突き付けられるシビアな「試練」です。
なかには、合格を「勝者」や「成功」、不合格を「敗者」や「失敗」ととらえる受験生、お母様・お父様もいらっしゃるでしょう。
あるいは、親戚や友人などの、周囲の目を気にすることもあるはずです。
今回は、『【中学受験】不合格は失敗か? その後の生徒たちを見て思うこと』と題して、中学受験で不合格になってしまうことは、果たして「失敗」なのか、元塾講師・元プロ家庭教師の目線で考えてみたいと思います。
また、中学受験で不合格だった生徒たちが、その後どんな進路をたどったのかという実例もご紹介します。
結果報告の電話がかかってこない…
受験前、最終授業のときには、伝えることがたくさんあります。
前日の過ごし方や、当日の持ち物、試験会場での過ごし方や、テスト中の注意点など、講師としてもすべてを出し切ってしまいたいと考えています。
それは、塾講師時代も家庭教師をしている現在も同じです。
そして…
「じゃあ、試験結果がわかれば、連絡お待ちしています」
そう言って、受験生たちの健闘を祈ることしか、私たちにはできません。
合格発表後、すぐに連絡をしてくれるのは…
「合格しました!」
という合格報告がほとんどです。
名乗るのも忘れるほど興奮しています(笑)
すぐにその喜びを分かち合わせてくれて、私も舞い上がってしまいます。
一方、なかなか電話が鳴らない、メールも来ないという場合があります。
その場合には、不合格で気持ちの整理がつかない、連絡する気になれないことが多いものです。
私の方も…
「ああぁ…アカンかったんかな…」
「今後の受験スケジュールを家族で話し合ってるんかな…」
と落ち着かないままに、合格発表の日を過ごすことになります。
確かに、受かれば「天国」、落ちれば「地獄」…
合格すれば「勝者」であり「成功」、不合格なら「敗者」であり「失敗」…
特に受験直後は、そのように思ってしまいがちです。
たまに、「あ、連絡するの忘れてました。合格でした」というマイペースな子もいますが(笑)
不合格だった生徒たちのその後は?
中学受験で不合格になってしまったら、その後、どのような進路をたどるのでしょうか?
実際の受験生たちの例を5つ、ご紹介していきます。
【O君の場合】高校受験で同じ学校にリベンジ成功
O君は、大阪府にある関西創価中学校のみを志望していました。
不合格だった場合には、他の私立中学校は受験しないと決めていました。
残念ながら、中学受験は不合格になり、地元の公立中学校に進学しました。
中学受験のときは、塾では最も下のクラスでしたが、高校受験で通っていた塾では、最上位のクラスだったそうです。
中学受験の学習内容はとても濃くて難しいため、成績は振るってはいませんでした。
でも、中学受験でしっかりと基礎学力が培われていたので、地元の中学校では成績トップクラスだったようです。
また、中学生になってから、論理的思考力や語彙力がつき、飛躍的に伸びたという面もあるようでした。
(実際、生徒の学力が伸びるタイミングは、人それぞればらばらです)
そして、高校受験でも関西創価高校を受験して、今度は見事合格!
中学受験のリベンジを果たしてくれました。
【Kさんの場合】高校受験でトップ公立高校に合格
Kさんは、おとなしい女の子で、大阪府大阪教育大学附属平野中学校を受験しました。
しかし、残念ながら、附属平野中学校は不合格。
ご兄弟が附属平野に通われていたので、とても悔しかったはずです。
本人が、他の私立中学校には行きたくないと考えていたため、Kさんも地元の公立中学校に進学しました。
ただ、Kさんには地元の公立中学校に進学したことが、プラスに働きました。
とてもまじめな性格だったため、授業態度や提出物も良好、教科(5教科+副教科)ともバランスがよく、内申点は満点でした。
学力はもともと高かったため、高校受験塾でも最上位クラスをキープしていたようです。
高校受験でも、附属平野高校を受験することもできたのですが、今度は大阪府の公立トップ校・天王寺高校にチャレンジ。
今度は無事に合格してくれました。
【Wさんの場合】高校受験でも残念ながら不合格
Wさんは、気が強い女の子で、大阪府女子校トップの四天王寺中学校を受験しました。
気が強いものの、本番に弱いタイプで、残念ながら四天王寺中学校は不合格でした。
地元の公立中学校に進学してからは、クラブにも精を出し、勉強もしっかりと続けているようでした。
定期テストでは高得点を取るものの、実力テストでは波があったそうです。
Wさんも、Kさん同様に、内申点がほぼパーフェクトだったため、公立の生野高校にチャレンジしました。
しかし、今回も残念ながら、結果は不合格。
「やっぱり本番に弱いんかも…」
と合格発表から少ししてから連絡をくれたときには、気の強いWさんもかなり落ち込んでしまいました。
しかし、併願校の私立高校に進学してからは、次の大学受験に向けて切り替えて、高校生活を送っているとのことでした。
もともと勝気のWさんですから、自分の信じる道を進んでいってくれることと思います。
【F君】大学受験では自分が主役の受験ができた
F君は、あまり中学受験に乗り気ではありませんでした。
お母様・お父様が本人を塾に通わせ、私立中学校に行かせたかったようです。
合格した大阪学芸中等教育学校でも、ぜんぜん勉強していなかったようでした。
高校に進級して、私が担当したときには中学内容もおぼつかない状態でした。
しかし、中学受験のときとは違って、本人から「家庭教師をつけたい」、「近大に行きたい」と言い出したそうです。
お母様・お父様もそのことをとても喜んでいらっしゃいました。
ただ、学力は中学内容で止まっています。
指導する私もたくさん課題を出し、F君本人も一日中勉強しました。
ときには、オーバーワーク気味だったため、寝る時間を削り、体調を崩したこともありました。
その後、なんとか模試の成績も偏差値が10以上も上がり、過去問演習でも点数が取れるようになりました。
でも、残念ながら、1年目の大学受験はすべて不合格。
ものすごい頑張りを見せてくれたものの、はじめの出遅れがかなり響いてしまいました。
F君は泣きながら、ご家族と話し合い、もう1年大学受験に向けて浪人生活をすることに決めました。
そして、2回目の大学受験は、立命館大学にみごと合格!
自分で主導権を握って、大学受験を乗り越えてくれました。
【H君の場合】合格したけれどもサボってしまい…
H君は、無事に第1志望の明星中学校に合格しました。
でも、中学受験を「ゴール」にしてしまっていたH君は、中学校に入ってから勉強しなくなってしまったそうです。
特に、中学から本格的に始まる英語は、常に欠点スレスレ…
「まずいな…なんとかしなければ…」
とは思っていたけれども、行動に移すことはありませんでした。
そして、気が付いたときには、もう大学受験が近づいていました。
英語は理系であれ文系であり、国公立であれ私立であれ、避けて通ることができません。
結果、H君は、かなりランクを下げた大学を受験して合格しました。
「H君なら、もっと上を目指せたのにもったいない」
彼の進路を知ったときの私の感想でした。
本人もそのことは自覚していたらしく…
「いやぁ、英語は手遅れでした」と悔しそうにしていました。
中学受験は「人間万事塞翁が馬」
「人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)」ということわざ(故事成語)がありますよね。
ある日、おじいさんの馬が逃げ出しました(不幸)
しかし、その馬は別の馬を連れてきました(幸福)
その馬に乗ったおじいさんの子が落馬してケガをした(不幸)
ケガのおかげで兵役にいかなくて済んだ(幸福)
つまり、「幸福と不幸は予測できない」という意味です。
私は中学受験も「人間万事塞翁が馬」だと考えています。
中学受験では、残念ながら不合格になってしまうこともあります(不幸)
でも、第2志望だった学校に進学して、かけがえのない親友ができることもあります(幸福)
ということもあるでしょう。一方…
中学受験では、第1志望の中学校に見事合格でしたかもしれません(幸福)
でも、H君のように中学に入学してから勉強しなくなってしまうこともあります(不幸)
中には、第1志望の中学校に合格したけれども、進学先の私立中学校で友達関係がうまくいかず、地元の公立中学校に戻ってきたという子もいました。
つまり、中学受験において、「合格=成功」、「不合格=失敗」ではない、ということを知っておかなければなりません。
中学受験は「ゴール」ではない
そういう意味では、中学受験は「ゴール」ではありません。
長い人生の中での、1つの「分岐点」です。
その分岐した先で、自分がどのように過ごすのかが大切です。
第2志望の私立中学校に進学したとしても、地元の公立中学校に進学したとしても、そこでできることはたくさんあります。
中学受験に限らず、人生すべてが実はそうですよね。
大学に入学しても、その4年間をどう使うのかで就職先も変わってくるでしょう。
クラブ活動に打ち込んで、生涯の友人を見つけることもできます。
(私は、大学のクラブで今の妻と出会いました)
インターンシップに参加したり、留学したり、アルバイトしたりもするでしょう。
企業に就職しても、どのように仕事に取り組むかで、未来も違ってくるでしょう。
ふとしたことがきっかけで、海外に移住することがあるかもしれません。
私のように、独立して、自分でビジネスを始める人も出てくるでしょう。
ですので、確かに中学・高校の6年間は、思春期を過ごす子どもたちにとって、大切な期間であることは確かです。
でも、中学受験だけで、その子の一生が決まってしまうわけではありませんよね。
私が担当した受験生たちには、合格発表の後にそのお話をするようにしています。
中学受験を「特別扱い」しない
周囲の同級生が、地元の公立中学校に進学する中で、自分だけが中学受験をすると…
「自分は中学受験をしたから偉いんだ」
と思ってしまう子が、どうしても出てきてしまいます。
言い換えると、公立中学校・公立高校のことを、見下してしまう子がいるということです。
もちろん、私立中学校・高校は、恵まれた環境であることは確かです。
しかし、日本の高校生の半分以上は、公立高校に通っています。
私立中学校・高校が多い、大阪府でさえ、公立高校生:私立高校生=約6:4の割合と言われています。
北野高校・天王寺高校・大手前高校・三国ヶ丘高校など、公立の進学校はたくさんあります。
私は、神戸大学に進学しましたが、確かに京都洛南高校や神戸海星女子、西大和学園などの私立・国立出身の同級生・先輩・後輩はいました。
ただ、それ以上に、鳥取県米子東高校や滋賀県膳所高校、福井県藤島高校や山口県宇部高校、奈良県畝傍高校など、公立高校出身の「デキる」人たちがたくさんいました。
つまり、中学受験したとしても、大学受験では地元の秀才たちと再び戦うのだということを忘れてはいけません。
私立ばかり見ていると、いつか「足をすくわれる」ことになりかねませんね。
【中学受験】不合格は失敗か? まとめ
「人間万事塞翁が馬」、何が幸福につながるか、何が不幸につながるかはわかりません。
中学受験も「合格=成功」、「不合格=失敗」とは限りません。
入試の結果よりも、中学校に進学してから、どのように過ごすかの方が大切です。
そういう意味で、中学受験は「ゴール」ではありません。
あくまで人生の1つの「分岐点」です。
そして、私立中学校・高校に通っているのは、あくまで一部分。
大学受験では、公立高校に通っている地元の秀才たちと再び戦わなければなりません。
受験生本人はもちろん、ご家族の納得のいく中学受験ができることを祈っています!